お役立ちコラム

【終活に拍手】第九回 死亡退職金

2021.04.20



『死は、全員が初体験。だから準備の仕方を知らない。しかし、しっかりとした準備をした人は家族から拍手喝采を受けます。』
長年、会社のために尽力された社長さんが退職する際に退職金を確実に払うためには、2つのことが必要です。
1つは、資金を準備すること。
2つは、役員退職金規定を整備すること。
皆さんの会社ではどうでしょうか?
1のお金を用意している会社はありますが、役員退職金規定をきちんと準備しているところは少ないようです。
また、その規定が昔に作っていて現状にあっていないことも多く見受けられます。
社長さんが、存命中に退職され、ハッピーリタイヤされればいいのですが、私たちは仕事柄、社長さんが現役の時、病気や事故で突然亡くなられることに遭遇します。
そんな時は『死亡退職金』を会社は払うことになるのですが、今日はそんな『死亡した役員に対する退職金』についてお話します。
一般的には、『役員退職金規定』で次のように定めているケースが多いと思われます。

【一般的な例】
第〇条 死亡役員に対する退職金
1.  死亡した役員に対する死亡退職金・弔慰金は遺族に支給する。
2. 遺族とは配偶者を第一順位とし、配偶者のいない場合には子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順位とする。なお、該当者が複数いるときは代表者に対して支給する。

このような規定ですと、たとえば妻が認知症だったら、妻の口座に振り込まれた退職金は、動かせないお金になってしまうリスクがあります。また妻が健常者の時、妻は、会社の後継者である長男にその退職金を受け取ってもらいたいと思っていても、長男が受け取ることができません。

【おすすめの例】
第〇条 死亡役員に対する退職金
1. 死亡した役員に対する死亡退職金・弔慰金は遺族の中から役員が事前に指定した者に支給する。(受取人指定書面をあらかじめ作成する)
2. 遺族とは配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹とする。
3. 指定がない場合、または指定した遺族が死亡している場合、または遺族以外の者を指定している場合は次の順位とする。

第一順位・・・配偶者
第二順位・・・子
第三順位・・・父母
以降、孫、祖父母、兄弟姉妹の順位とする。

なお該当者が複数いるときは代表者に対して支給するものとする。

このように、死亡退職金・弔慰金の支払先を社長自身が指定できる規定に見直せば、例えば遺族の中でも会社の後継者である長男を受取人に指定することで、長男の納税資金・遺産分割資金・自社株式の買い取り資金など、さまざまな活用が考えられます。
私は専門家として、スムーズな事業承継のために『役員退職金規定』を見直されることをお勧めします。


執筆者:田村滋規


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