お役立ちコラム

【終活に拍手】第四回 キャッシュカードの暗証番号が思い出せなくなる認知症

2020.12.29




『死は、全員が初体験。だから準備の仕方を知らない。しかし、しっかりとした準備をした人は家族から拍手喝采を受けます。』

今日は、『認知症』の話をします。
5年後の2025年には65歳以上の日本人の約20%が認知症になるという推計があります。つまり年金をもらうようになったら、5人に1人の確率で認知症になると思ったらいいでしょう。

認知症といっても様々なケースがありますが、今回は私の叔母のケースをお話しします。
叔母は、長男と嫁と三人で暮らしていました。
87歳まで元気でした。介護も必要なく、自分で歩け、自分で食事もでき、トイレも大丈夫でした。

ところが、4年前の夏に、突然脳梗塞になり、治療で一か月入院し、幸いマヒ等はなく退院したのですが、少しずつ認知症が進んでいきました。

叔母は貸アパートを持っていたので銀行に通帳があり2000万円くらいのお金を持っていました。
当然その銀行でキャッシュカードを作っていたのですが、脳梗塞を境に、暗証番号が思い出せなくなったのです。つまり、カードでお金が引き出せなくなったのです。叔母の長男が代わりにお金を引き出そうにも暗証番号を聞いていなかったのでどうにもなりません。
銀行の届出印もどこに置いたか思い出せなくなり、長男が家中を探したけど見つからなかったそうです。

こうなると、やっかいです。叔母のお金も、アパートの処分なども家族が自由に扱えなくなるのが認知症です。
   
こういう状況を解決する方法は、家庭裁判所に『法定後見人』を選任してもらうという方法です。
しかし、この『法定後見人』に長男や長男の嫁のような親族がなれないことがあるのを、皆さん知らないのです。
じゃあ誰がなるかというと、家庭裁判所が弁護士や司法書士という職業の人を『法定後見人』に決定するのです。

そして彼らは、叔母の通帳等を管理し、長男や家族が叔母のお金の使い込みをしないか見張る立場になるのです。つまり叔母のお金は、長男や嫁の望むようには基本的に使えなくなります。これが現在の法律なのです。

こんな状況を防ぐ為に、私は専門家として、あなたの家族を『後見人』に指名できる『任意後見制度』をみなさんにお勧めしているのです。

これは、あなたが認知症等になり正常な判断ができなくなった時、あなたの『後見人』に、あなたの家族の誰かを事前に指名しておく制度です。これは、公証役場で『公正証書』にしておく制度です。
これなら、銀行のお金も、アパートの修理や売却も、あなたの指名した後見人の判断で、できやすくなるのです。

最後に、とても大切なことをお知らせします。
それは、私のお勧めするこの『任意後見制度』も、あなたが認知症になった後では利用できません。
なぜなら、認知症でなく自分の意思表示ができる人しか、『公正証書』を作ることができないからです。

20%の確率で認知症になる時代なのに、私が、『今すぐに任意後見契約の手続きをしましょう』とアドバイスしても、自分はまだ大丈夫と思っている人がほとんどです。

執筆者:田村滋規


関連記事